涙の川でバタフライ

30代になってから泣いてばかりいる。子どもの頃、泣いたら何かに負けたような気がしてかっこ悪いと思っていたが、今は日常的に泣いている。泣いたところで泣きたい状況は何も改善しないのだけど、気が付くと目がじんわりと熱くなり涙がぽろぽろ出てくる。

 

わたしはおおざっぱで、飽きっぽく、ふまじめで、体力もない人間である。人からごちゃごちゃ言われるのが嫌なので、文句言われないように生きていたらいわゆるバリキャリになってしまい、不相応な難しい仕事にやられている。ダイバーシティを謳う外資系の会社は、てっきり属性ではなく成果で判断してくれるものと勘違いしていたが、結局日本にあるのでおぞましき「おじさん」社会である。肩書がつくのも年配の「おじさん」優先だし、キャバクラ・風俗付き合いのいいグループがこそこそ話し合ったことで物事が進むし、「女の子のわりにがんばってる」「女の子なのだから言い方に気を付けて」「結婚したら主婦になるんだよね」とか普通に言われるよ。森喜朗の発言にも全く驚かない。「おじさん」たちの本音だと思う。こういう理不尽さに真正面から反論したい気持ちは山々だけど、それが当たり前すぎて「わきまえ」ながら「おじさん」に大差をつけて優秀にならないと身を置けないとあきらめている。

 

夫とは3年前に結婚した。わたしを大切にしてくれて、面白がってくれる、優しいひとである。結婚式を終えてすぐにでも子どもが欲しかったが、周囲から聞こえて来る話とは違い、すぐには妊娠できなかった。半年後不妊治療をしてすぐに妊娠したが、初期でだめになってしまった。がっかりしたけど妊娠できる身体だったんだとほっとした気持ちもあった。数カ月後また妊娠したが同じくらいの時期にだめになってしまった。あまりに悲しくて心がパリーンと割れたみたいだった。それでも2回妊娠できたのだからと、がんばって治療を続けてあれから1年が経つが結局成果は出ず今に至る。わたしにも夫にもそれらしい原因はみつからない。でもなんとなくわかっている。いつも仕事でイライラカリカリしていて、自分を生かすので精一杯という感じ。これじゃあ来るものも来ないよなあと。夫も、仕事中はイライラカリカリ、生理が来ると情緒不安定なわたしを持て余しているように感じる。夫は「わたしがにこにこ幸せで居てくれれば子どもはいなくていい」と言うけれどそれが一番難しい。道ゆくベビーカーが凱旋パレードに見えて道の隅っこに寄ってしまう。マタニティフォトは眩しすぎて目がつぶれそう。精神科に行ったら診断がもらえそうだ。

そんなわけでわたしはいつも泣いている。魔女の宅急便でキキがスランプに陥り泣きながらほうきを削るシーン、あれを見るたび自分を重ねずにいられないが、女にあんな夜があることを知っている宮崎駿はまじですごい。

 

 魔女の宅急便でキキが飛べない理由はなぜ?魔力を失うのは初潮が関係?

 

友人からは、仕事に治療に家事、何もかも頑張りすぎだと言われるけど一体何から手放せばいいのかわからない。荷物が増えすぎて潰れそうになった時もあったけれど、同時に筋肉もついてきて大概のことは平気になってきている。全然こんなに強くなりたくなかったけど、そうでなければ全部ゲームオーバーになってしまう気がする。いつかすべてが上手くいったら頑張ってる女を癒す宗教でも開きたい。 聖歌は乙女のポリシーかな。